生物の持つ多燃料エンジンが働く仕組み


MotAB

Yasutaka Nishihara and Akio Kitao
Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A. 112, 7737-7742 (2015).

Open access article

大腸菌やサルモネラ菌などの細菌は、細胞内外のイオン濃度の差に起因するエネルギーを非常に効率よく利用して、べん毛のモーターとスクリューにあたるべん毛繊維を回転させ泳いでいます。細菌のべん毛モーターには、プロトンを固定子に透過させて回転のために必要なエネルギーを作り出すものや、ナトリウムイオンや複数のイオンを利用するものもあります。しかし、細菌のべん毛モーターの原子構造はこれまで未解明で、イオンを透過する詳しい仕組みも明らかになっていませんでした。

我々は、これまで未解明だったべん毛のモーターの固定子であるタンパク質複合体MotA/Bの立体構造モデルを構築し、プロトンがヒドロニウムイオンとしてこの膜貫通タンパク質の内部を透過する機構と、プロトンの透過がモーターの回転方向を一方向に制限するラチェットレンチのような動き(ラチェット運動)を生み出すことを明らかにしました。